視線を落として口を噤んでいると、
「……水着を着ると、手術の傷跡やIVHの痕が見えるから?」
 ピタリと言い当てられて唖然とする。
「わからないほうがどうかしている。去年の夏も今年の夏も、夏服になった途端にIVHの痕を気にして手で隠していただろ」
 言われて気づく。夏服になってから傷が見えないか、と気になって手で押さえることが多くなっていたことを。
 ワンピースタイプの水着なら、手術の傷跡は隠れる。でも、IVHの痕は隠せない。傷跡を気にする人などいないだろうし、気になるのは自分だけとわかっていても、どうしても気が進まないのだ。
「気乗りしないなら行かなくていいんじゃない? 時間があるなら母さんやじーさんに会いに来て。喜ぶから」
「……うん、海水浴はもうちょっとだけ考えてみる。ツカサの予定は?」
「十六日から三十日まで車の教習場で合宿。三十一日に試験」
「インターハイが終わってもなんだか忙しいね」
「でも、今年の紅葉は少し離れたところへ見に行ける」
「それは嬉しい……。あ、白野のパレスに行きたいな。去年はあまり紅葉を楽しめなかったの。だから……」
「わかった、予定に入れておく」
 そんな会話をしながら美味しい夕飯に舌鼓を打った。