聖も理系だし、そこそこできるほうだと思う。それでも、全国模試に名を連ねるほどではない。そこからすると、御園生や藤宮先輩は超人の括りに入るわけで……。
「翠葉ちゃんは理系なの?」
 柊が問いかけると、
「どちらかというと理系のほうが得意、っていうだけだよ」
 御園生の答えには、若干語弊があると思う。
 御園生の場合、確かに「理系のほうが得意」ではあるけれど、どの教科も基本できるのだからオールマイティーではなかろうか。
 俺が口を挟む前に、
「じゃぁさじゃぁさ、取引しませんか?」
「取引……?」
「そっ! 私、理系が壊滅的にだめなの。いつも聖に教えてもらってなんとか平均点前後を採れる程度。だから、夏休みの宿題、理系科目見てもらえないかな? その代わり、私はソルフェージュを教えてあげる」
「本当っ!?」
「ソルフェなら任せてっ!」
 ふたりは利害が一致といったふうで、取引を完了させた。
「聖、御園生ってさ、教えるのもうまいんだ。これで柊の成績が上がったら、聖形無しだな?」
「あれ? 御園生さんって俺のライバル……?」
「密かなる伏兵ってやつじゃない?」