「何なにっ!? その藤宮先輩って翠葉ちゃんの彼氏なのっ?」
 柊のアンテナはそっち方面に引っかかったらしい。やけにキラキラした目で御園生を見ている。と、御園生は何を思ったのか、柊の頭を数回撫でた。
 意味がわからん……。
 そう思ったのは俺だけではなかったようで、
「翠葉ちゃん……柊は質問の答えが欲しいです」
 柊がちんまりと正座をして抗議すると、
「あ……あの、えと……はい。私をスイと呼ぶ人はお付き合いしている人です」
 ものすごく慣れていない人の答え。ほんのりと頬を染めているところがかわいさを助長する。
 ま、それもそうか……。うちの学校では誰に何を言わずとも公認カップルのようなものだし。こんなふうに人に話すことはなかったのだろう。
「藤宮先輩って言うからには、藤宮財閥の人間?」
 隣に座る聖に尋ねられ適当に肯定する。
「その人、全国模試がトップの人だよねっ!?」
「そっ」
「うちの先輩がさ、満点なんて採られたら勝ちようがない、っていつも嘆いてるんだ」
「そうなん? 藤宮先輩は学内テストもいつも満点。失点したことが一度もなくて、長期休暇中の課題を一度もやったことのない超人。俺から言わせたら宇宙人。因みに、御園生も文系以外は満点採る嫌みなやつだよ」