「レッスン日、決まった?」
 御園生に声をかけると、
「うん。日曜日にしてもらえたの」
「ふふっ! 日曜日は一緒にお昼ご飯食べるんだ!」
 嬉しそうににこにこと笑う柊の隣で、御園生は一歩引いている感じ。そんな御園生に気づいたとしても、柊は対応を変えることはないだろう。御園生も、そんな柊にしだいに慣れていくと思う。そうやって少しずつ距離が縮まればいい。
 そう思っていたところ、聖が御園生に向けて手を差し出した。
「改めてよろしくっ! 俺もピアノ弾くんだ。今度連弾しよう」
 御園生は聖の手を見て喉を小さく上下させる。その先は、きっと握手はできずに困惑した表情になるだろう。
 少し先の予測をして、俺が場を取り持とうとしたとき、
「御園生さん……?」
 一歩出遅れた。
 こういうタイミングの一致ぶりは「血」かな、と思う。
「あ、ごめんなさい。大きな手だな、と思って……」
 御園生は苦笑しながら聖の手を取った。そして、
「よろしくお願いします。でも私……連弾はしたことがなくて……」
「そんなの関係ないよ! やってるうちに楽しくなっちゃうからさ!」
 手がつながれたまま、まるで何もなかったかのように話が続いた。