御園生が音楽教室の説明を聞いている間、俺は聖と二階の居住スペース、リビングにいた。
「いやー、写真で見て知ってはいたけど、本当にかわいい子だね?」
「だろ?」
「でも、アキが言ってるほど人見知りっぽくは見えなかったけど?」
「ま、だいぶ人に慣れてはきたかな」
「何、その動物が人に慣れました的な物言い」
「あはは、まさにそんな感じだったんだってば。入学当初は人に声をかけられるたびに困惑してた」
「へぇ……」
 あの頃と比べたらずいぶんと変わったと思う。それでも、まだ今のクラスの男子には慣れていない。きっと、聖が挨拶のときに握手を申し出ていたら、御園生は聖の手を見て固まってしまっただろう。

 聖とゲームに夢中になっているところに柊が御園生を連れて帰ってきた。
「たっだいまー! 無事ご入会いただけましたー!」
 柊がハイタッチを求めてきたので、俺と聖が応じる。と、柊の後ろで御園生が目をぱちくりとさせていた。