「でも、大学に入ったら常に評価はつきまとうよ? それこそ、今勉強している数学や現国がピアノだったり歌、ハープに変わるわけだし」
 柊ちゃんの言葉がズシリと肩に乗る。
「そうなんだよね。まずは受験の時点で点数をつけられたり評価されるわけで、すでに受難が始まっているというか……」
 ますますもって音大が無理な進路に思えてくる。
 レッスンを始めると決めたそばから挫折感が漂うのってどうなのかな。
 安易に考えているわけではない。でも、細かな部分をとって見るだけでも、柊ちゃんより浅はかな行動や選択に思えるのだ。
「御園生、まだ時間はあるよ」
 じっと話の行方を見守ってくれていた佐野くんの言葉に救われたくて、救われなくて。
 時間があったとしても、このままの私では到底答えなど出せそうにはないのだ。考えなくちゃ……。もっともっと考えなくちゃ――。
 内へ内へと考えが向いているところ、
「チョーップ!」
 柊ちゃんからかわいいチョップが飛んできた。
「翠葉ちゃん、考え始めると周りが見えなくなるタイプでしょ?」
 コクリと頷くと、聖くんと柊ちゃんが顔を見合わせて笑った。