「せっかく真白さんが一枚一枚丁寧に作ったのだから、何かひとつくらいお願いごと書こう?」
 司はどうするだろう、と見ていると、意外なことに短冊を一枚手に取った。
 ……今度から、何かお願いごとがあるときは翠葉ちゃん経由でお願いしようかしら。
 そんなことを考えるほどには、翠葉ちゃんに言われたことは素直に聞いているように思えた。

 すべての短冊を飾り終わったあと、
「翠葉ちゃん、七夕様弾いてくれる?」
「え?」
 楓がガレージから大きな荷物を抱えて戻ってきた。
 何を持っているのかと思えば、翠葉ちゃんが「ハープ」と零す。
「弾いてもらいたいなーと思って、楓さんに持ってきてくれるようにお願いしていたの」
 果歩ちゃんはにっこりと笑って翠葉ちゃんにお願いする。翠葉ちゃんは少し戸惑っているようだったけれど、
「私も聞きたいわ」
「私も聞きたいです」
 私と涼さんからもお願いをすると、うろたえつつもハープを受け取った。