「真白さん、堀江さんがいらっしゃいましたよ」
 涼さんに声をかけられお庭へ出る。と、実家の庭師、堀江さんがお弟子さんと笹を携えて立っていた。
「真白お嬢様、どちらへ立てましょうか」
 にこやかに尋ねられ、庭の一角に立ててもらえるようお願いした。
 今日は七夕。いつもなら涼さんとお出かけをしてご飯を食べて帰ってくる日だけれど、今年は少しわがままを言ってみた。
 湊も楓も結婚して家族が増えたから、自宅でささやかながらも七夕祭りをしたい、と。
 涼さんはすぐに賛同してくれ、果歩ちゃんと翠葉ちゃんに声をかけたところ、ふたりともふたつ返事で了承してくれた。幸い、楓のシフトも夜勤ではなく、こういったイベントごとには興味を示さない司も、翠葉ちゃんが来るなら、といった具合に参加することに。湊は静くんとパーティーへ行かなくてはいけなくなるかもしれない、とのことで返事は保留。みんなが揃ったら嬉しいけれど、今日は湊と静くんがいなくても賑やかな集まりになりそう。
「立派な笹をありがとうございます」
「いえいえ。こんなことでよろしければいつでもおっしゃってください」
 堀江さんは七福神の恵比寿さんのような笑顔でお庭を出ていった。