自分のやましさを気取られる前に返事を聞きたかった。だから、
「聞いてもらえるの? もらえないの?」
「……ツカサが願いごと?」
「願いごと」というワードが、よほど俺に似合わなかったのだろう。翠は目を丸くして俺を見ている。
「何か問題でも?」
「あ、ううん、少しびっくりしただけ。でも、私にきける願いごと?」
「翠にしか叶えられない願いごと」
 これ以上深く突っ込まれたくないんだけど……。
「普段、お願いなんてされないからちょっと緊張する。どんな願いごとかな……。でも、毎日練習がんばっているものね。優勝したら何かご褒美があってもいいよね」
 翠はにこりと笑った。
 俺はそれで助かったけど、翠は根本的なところで脇が甘いと思う。
 俺にどんなお願いをされるのかもわからず安請け合いする程度には――。