「ツカサ?」
「……それ、どこにポイントがあるの? 覚えていること? それとも特別な日扱いしているところ?」
「ポイントは……ひとつは出逢った日が七夕であること。ふたつめは、出逢った日を覚えていてくれるところ。三つめは、覚えていてくれるだけじゃなくて、毎年特別な日にしてくれるところ。どれもすてきだな、と思う」
 憧れる――まるでそんな口ぶりだった。
「……今さら出逢った日は変えられないし、出逢った日を覚えていたところで、学生であるうちはその日に出かけるのは無理だと思う」
 言ってはっとした。隣の翠はきょとんとした顔をしている。
 気恥ずかしさに視線を逸らすと、隣からクスクスと耳に心地いい笑い声が聞こえてきた。
「出逢った日が好きな人の誕生日って、それだけで特別感満載なんだけどな……。ね、来年の誕生日もふたりでケーキを食べよう?」
 そんなことでいいのか、と思えば、
「うん。そんなことでいいの」
 翠は何を言ったわけでもない俺にそう言って笑った。