泣く子も黙るインターハイなのだ。その日に向けて毎日のように苛酷な練習をしているのだから、何かご褒美があってもいいと思う。
 それが、私にしか叶えられないものと言われたら、了承しないわけにはいかない。
「お願いってなんだろう。それはそれで楽しみだから、優勝するまでは秘密にしていてね」
 話が一段落すると、
「インターハイに応援に来るって言ってたけど、泊まり?」
「うん。今年の宿舎はウィステリアホテルなのでしょう? 先日静さんから連絡をいただいて、ツカサが使う部屋の隣を押さえてくれたって教えてくれたの」
「へぇ……」
「何もなければ唯兄が一緒に行ってくれる予定」
 ツカサはあからさまに嫌な顔をした。
「本当に唯兄のことが好きじゃないのね?」
「会うたびにつっかかってくる人間にいい印象を持てる人間がいるなら会ってみたい」
 私は思わず笑ってしまう。
「でも、唯兄のあれは、ツカサがお気に入りだからだと思うよ?」
「その曲解しまくった解釈もどうかと思うけど……」
 そんな話をしながらマンションまでの道のりを歩いた。