「あの、果歩さんは妊婦さんなので私がっ――」
「だいじょーぶだいじょーぶ! 座ったり立ったりは大変だけど、食器を運んだりできることはあるからさ」
「そうそう。果歩が動けない分、俺が動くから翠葉ちゃんは花火の片付けお願いね」
 ふたりは私が何を言う前に動き始めてしまった。
 仕方なく花火の片づけを始めるも、花火の後始末など数分で終わってしまう。手持ちぶたさに楓先生を手伝おうとしたら、
「せっかくの浴衣が汚れちゃうからだめ」
 と一蹴されてしまった。
 次なる場所へ歩みを向けるも、
「お気持ちはありがたいのですが、『願いごと』という個人情報を扱いますのでご遠慮ください」
 こちらも涼先生ににこりと笑って却下されてしまう。
「翠葉ちゃん、ハープは車で運ぶから、マンションまで司に送ってもらったらどう?」
 ツカサを振り返ると、「送っていく」と玄関へ向かって歩きだした。
 私はその場にいた三人と、家の中にいる果歩さんに声をかけてからツカサのあとを追った。