「……大丈夫ですか?」
「大丈夫。でも、ちょっとゆっくり目でお願い」
「あ、はい」
 自分もハイペースで歩けはしない。
 果歩さんは「つらい」と言いながらも喋ることをやめようとはしなかった。
「司とはどう? うまくいってる?」
「どうでしょう……? 両思いになってからのほうがうまくいっていないというか、何もないはずなのにすれ違ったり、小さな問題がちょこちょこ起こります」
「たとえば?」と訊く果歩さんに、付き合い始めてからのあれこれを話すと、声を立ててケタケタと笑われた。
「果歩さん、ひどいです……」
「ごめんごめん! あまりにもかわいいすれ違いしてるもんだから」
「かわいいすれ違い、ですか……? 私はいつも必死です……」
「ま、そうだよね。当人たちは笑えないよね」
 言いながらも、果歩さんはクスクスと笑う。
 そんな果歩さんを見て思う。
 果歩さんになら話せるかな……。