「自分で着るの、久しぶり……」
 去年は茶道部で何度か着物を着たけれど、藤の会で着た振袖は園田さんに着付けてもらった。何より、自分の浴衣に袖を通すのは三年ぶりのこと。
 黒地とピンクが交互に縫い合わされている巾着に必要なものを入れると、携帯で時間を確認する。
「三時半前……」
 果歩さんとの待ち合わせは三時半。ちょうどいい時間といえば聞こえはいいけれど、人と待ち合わせているにはギリギリすぎる時間に少し肝を冷やした。

 ゲストルームを出ると、果歩さんも家から出てきたところだった。
「お! 翠葉ちゃん浴衣!」
「果歩さん、こんにちは」
「かわいいかわいい、似合ってる! 私なんて妊婦スタイル。かわいくもなんともないよー」
「今、臨月ですよね?」
「そっ! 二十七日が予定日だけどどうかな。早まるか遅れるか」
 にこにこと話す果歩さんは、シャープでスレンダーな印象から少し離れ、角がないまぁるい印象になっていた。