ツカサは近くに来るなり、携帯ホルダーに視線を移す。
「携帯を所持していても出なかったら意味がないんだけど」
 言われて気づく。テストが終わってもサイレントモードのままだったことに。
「ごめん……」
 サイレントモードを解除しようと携帯のディスプレイを見て唖然とした。ディスプレイには今まで見たこともない着信件数が表示されていたのだ。
 もしかして、これ全部ツカサからの着信……?
 履歴を見ると、見事にツカサの名前で埋めつくされていた。
「ごめんなさい……でも、どうしたの? 急用?」
 ツカサが答える前に飛翔くんがうんざりした顔をする。
「あのさ、司先輩はあんたが困る事態に陥ってないか心配してくれたんじゃないの?」
「えっ?」
 ツカサを見ると、図星といった表情だった。
「そのくらい察しろよ。ああああっ、面倒くせぇ女っ」
 飛翔くんはこめかみに片手を添え、
「先輩、コレの連行お願いします」
 文字通り、「引き渡す」ように私の背を押し、飛翔くんはくるりと方向を変えて早足で歩きだした。