「中学一年のとき、男子に告白されて断ったの。でも、なかなか聞き入れてもらえなくて、無理矢理キスをされそうになったり、行く手を阻まれて腕掴まれたり手首掴まれたり、そういうことが続いて、気づいたときには過剰反応するようになってた。それを面白がったほかの男子にも同じようなことをされるようになって――以来、男子が苦手です」
 言葉にしたら、あまりにも単純なきっかけだった。
「笑う……?」
 高い位置にある顔を見上げると、
「……笑わない。ただ、くだらないとは思う」
 くだらない、か……。そうかもしれない。自分で話してみても、「くだらない」という思いは多少なりとも生じる。
「そうだね……その当時、くだらないって思えたら良かったんだけどな」
 苦笑を漏らすと、「違う」と低い声が短く唱えた。
「え……?」
「あんたが、じゃなくて、そういうことを面白がった人間が、くだらない」
 きっぱりと言われて、「勘違いするな」の視線を向けられた。