芝生広場内に配置できる見張りは全員で十人。その半数の人間が、桜の木と捕虜の連結部分に集結している。
 前半一時間は運動部が鬼。後半一時間は文化部が鬼。最終的には捕虜の人数で勝ち負けを競う。
 私は走ることができないから、参加はできないと思っていた。でも、
「参加することに意義があるのよ。それに、ずっと走ってなくちゃいけないわけじゃないし、立ちっぱなしってわけでもない。捕虜になったとしてもそれなりに楽しめるわ」
 そう言ってくれたのは桃華さんだった。
 だから、鬼ごっこよりはかくれんぼの要領で逃げていたのだけど――。
「あんたのそれ……逃げる気あんの? まさかそれで逃げてるつもりなの?」
 早々に、あまり見つかりたくない人間に見つかってしまった。
 飛翔くんを見ると、どうしても背を向けて逃げるよりは後ずさりをしてしまう。それを見て言われた一言だった。
「あーーー……猶予やる。十秒数えるから逃げろよ」
「えっ、あの――」
「逃げろって言ってんの。いーち、にーい、さーん――」
 数え始めては、目が「とっとと行動しろ」と言っている。
 私は慌てて早歩きで歩きだした。でも、どれだけ急いで歩いたところで、十秒で進める距離などたかが知れている。