期末考査最終日、テストが終わると七夕イベントと称した鬼ごっこが始まった。
 七夕の鬼ごっこ大会は、久先輩が「鬼ごっこ同好会」を発足してからの恒例行事だという。一部の生徒は久先輩が卒業したら違うイベントになると思っていたようだけれど、久先輩の意志を継いだ後任会長がいて、その人の号令のもと、このイベントは継続されている。
 ルールは簡単だけど、ほんの少しややこしい。
 運動部対文化部の鬼ごっこは先攻後攻をジャンケンで決める。今回は運動部が勝ったことから、運動部が先に鬼となって始まった。
 捕まった人は芝生広場の一角へ集められ、一本の桜の木を先頭に、捕まった人から順番に手をつないで一列に連なる。その人たちは捕虜と呼ばれるのだけど、一度捕まった捕虜を助ける方法があるのだ。
 桜の木と一番最初に捕まった人の連結部分を切ることができたら全員解放。列の途中、人と人の手がつながれている部分を切った場合は、切られた人から最後尾の人までが自由になる。より多くの仲間を解放するためには、桜の木と一番最初に捕まった人の連結部分を切らなくてはいけない。しかし、そのあたりには運動部の人が警戒網を張り巡らせているため、容易には近づけないのだ。