そんな自分をまじまじと見る目から逃れるために、
「ケーキ、冷えたのを持ってくる」
「え、でも――」
「こんなことでもなければケーキなんて作らない。だから、美味しい状態のものを食べて」

 キッチンの照明のもとでぼんやりと考える。
 翠と秋兄はどこまでの関係だったのだろうか、と。
 キスマークであの状態だったわけだから、キス以上のことをしたとは思えない。でも、秋兄なら難なく身体に触れるくらいのことはしている気がしなくもない。
 それに、今日あのタイミングで現れたのは、前にもこういったことがあったからではないのか――。
「こんなこと気にしても仕方ないのに……」
 それでも俺は気にするのだろう。翠にすべてを許されるその日まで――。