「しゃぁないな、いいよ。引き受けてあげる。その代わり、何プレゼントするのか教えてよ」
 事あるごとに交換条件を提示するのはこの人の癖だろうか。
 俺が無言でいると、
「もしかして、ネックレスとか指輪とか、俺のものアピール的な? ほらほら、白状しちゃいなよ」
 人の神経をここまで逆撫でできるのは、一種特技に思えなくもない。
「……ひとつはナマモノなので、今日中に来るよう口添えお願いします」
「ナマモノ、ね。へぇ~、まさか司っち手作りのケーキとか?」
「……それが何か」
 これ以上この人の相手をするのは耐えられる気がせず、コピー用紙を取り上げようとした。しかし、あっさりかわされる。
「わかったわかった。部屋のドアに貼っておく。でも、なんか高崎さんの話聞くって言ってたし、この時間だし、場合によっては夕飯後になると思うよ」
「かまいません。お願いします」
 それ以上の言葉を交わしたくなくて、すぐに背を向け階段を上りだした。