「そんなふうに言わなくても……」
 どんな言葉を繰り出そうともツカサの笑みが緩まる気配はなく、
「もう……どうしたら許してくれるの?」
 ツカサは急に真顔になって、
「キスしてくれたら?」
「なっ――」
 私が一歩身を引くと、引いた分だけツカサが踏み出した。
「嘘。でも、キスはさせて」
 私は玄関のドアを背に、ツカサに口付けられた。
 唇が離れると、ツカサは何事もなかったかのようにいつもの部屋へと私を促す。
 急にキスされるといつも以上に心臓がドキドキする。なのに、ツカサにはなんの変化も見られない。
 私だけが動揺しているみたいで、ちょっと悔しい――。
「お茶淹れてくる」
「あ、自分でするよっ――」
 慌てて立ち上がろうとしたら、
「だからさ、今日は誕生日を祝う日じゃないの? それとも何、祝わせるつもりがないの?」
「そんなつもりは……」
「とりあえず、部屋で待ってて」
「はい……」
 私は渋々ラグに腰を下ろした。