自分がどこに立っていて、何が必要なのかが見えた途端、クリアすべき問題が次々と浮上し始めた。けれども、それらは前へ進むための一過程であり、この先にはまだ越えなくてはいけない壁がたくさんある。それらを前に緊張は生じるけれど、身が竦むような緊張ではなかった。緊張と共に、「がんばろう」と思えるような、そんな気持ち。
 不安に思うことは多々ある。どれが正しい道なのかもわからない。でも、不安に呑まれるだけではなく、一歩ずつ進もう、一歩ずつなら進める、そう思える自分がいた。
 きっと、自分の成長が目に見えることなどそうないだろう。でも、一歩……一歩前へ進めた気がした。

 夕飯を食べ終えツカサの携帯を持って十階へ上がると、隙のない笑みを湛えたツカサに出迎えられた。
「遅くなってごめんなさい。……機嫌、悪い?」
 苦笑しながら尋ねると、ツカサはにこりと笑って、
「これからプレゼントを渡そうかってところで帰られるとは思っていなかった」
 無駄にきれいな笑顔は恐怖でしかない……。
「ごめんなさい……」
「まさか誕生日を祝う日に、そんな顔で謝罪されるとも思ってなかったんだけど」
 ツカサは笑顔のままだ。