「ひとつは音大。でも、どの学科、というところまでは絞れてない。あとのふたつは写真学科と園芸学科。写真学科と園芸学科は準備という準備はこれといって必要ないのだけど、音大に関しては実技試験が必ずあるから、今から準備をしておかないと受けることもできなくなっちゃう」
 そこまで言って、お父さんとお母さんに向き直った。
「まだ音大を受けると決めたわけじゃないのだけど、行きたいと思ったときに進めなくなるのは嫌だから、ずっとお休みしていたピアノとハープのレッスンを再開したいの。……いい?」
 お父さんとお母さんは顔を見合わせクスリと笑った。
「だめなんて言わないわ。ね、零?」
「もちろん」
 その後、レッスン先という問題が浮上したけれど、それは一時保留にしてもらった。
 今まで教えてもらっていたピアノの先生のところへ行くとなると、幸倉まで通うことになる。しかし、平日に通うことはどう考えても無理。すると、土曜日か日曜日になるわけだけど、この先生は日曜日を定休日としているのだ。
 ハープの先生は出産で一時帰省されていた。すでにお子さんは生まれているだろう。けれど、レッスンを再開しているのかはわからない。
 一度、それぞれの先生たちと連絡を取る必要があった。