家族が揃う夕飯の席で、
「さっき唯から聞いたけど、葵に仕事の話を聞きにいったって?」
「あ、うん……進路相談みたいなお話、かな?」
「なんで葵?」
「なんで、か。んー……建築学科に進学したけど途中で辞めて、樹木医になる道を選んだでしょう? でも、まだ樹木医にはなっていないから、かな」
 その言葉で納得したのは唯兄だけだった。
「なるほどね。一本道を無難に歩いてきた人じゃなくて、ちょっと遠回りしている人の話が聞きたかったんだ?」
「そうかな……? 私、未だに何になりたい、というものがないから……」
「進路調査票、書けそう?」
 お母さんに尋ねられ、
「まだ、第一希望や第二希望、という形では書けない。でも、どの学科に興味があるのか、そのくらいは的が絞れたかも。これからもう少し調べて、どこの大学の何学科、くらいは答えられるようにしようと思って……」
「何学科が気になってるんだ?」
 今度はお父さんに尋ねられた。