高崎さんは腕時計を見ると、
「じゃ、ラウンジでちょっと待っててもらえる? 俺、今日は五時上がりなんだ。仕事後のほうがきちんと時間取れるから」
「すみません」
「いいえ。ラウンジには七倉さんがいるからお茶でも飲んで待っててね」
「はい」

 ラウンジへ入ると七倉さんがテーブルへと案内してくれた。
「お飲み物は何になさいますか? 本日、デカフェの紅茶を仕入れましたのでミルクティーもご用意できます」
「じゃ、それをお願いします」
「かしこまりました」
 紅茶はすぐに運ばれてきた。私はいつもより多めにお砂糖を入れ、少し甘めのミルクティーを口にする。そこへ、
「リィ?」
 声のする方を振り返ると、唯兄が立っていた。いつもの服装より、若干改まった格好をしているところからすると、ホテルへ行ってきたのかもしれない。