マンションに戻ってくると、エントランスで高崎さんが観葉植物のお世話をしていた。
 通りすがりに多肉植物の本を買ってきたことを話したことがきっかけだろうか。エレベーターに乗ったときには高崎さんの仕事について考え始めていた
 マンションのコンシェルジュとして働いているけれど、仕事はグリーンコーディネーターと言って過言ではない。敷地内の植物から居住者の要望に応じて、家々のグリーンのお世話もしている。
 蒼兄と同じ建築学科に進んだにも関わらず、樹木医になりたい、と大学を辞めてしまった人。でも、今はまだ樹木医にはなれていないという。
 高崎さんには将来のビジョンがどう見えているのだろう。話を聞いてみたい――。
 はっと我に返ったとき、ツカサの家の玄関にいた。
「ツカサっ、私、高崎さんに訊きたいことがあるから今日はもう帰るねっ」
 早歩きでエレベーターホールへ戻ると、乗ってきたエレベーターが待機した状態だった。それに乗り込み一階へと下りる。
 エントランスにはまだ高崎さんの姿があった。
「高崎さんっ」
「あれ? 翠葉ちゃんどうしたの?」
「あのっ、お仕事のことうかがいたくてっ」
「え? 仕事……? あ、グリーンコーディネーターのことかな?」
「それもあるし、ほかにもうかがいたいことがあって……」
「もしかして、進路相談っぽい話?」
「はい」