「……そっか。藤倉のキャンパスには医学部がないのね。ツカサも大学に受かったら支倉でひとり暮らしをするの?」
「司も」ということは、姉さんか栞さん、兄さんあたりにひとり暮らしのことを聞いたのだろう。
「一年目は藤倉キャンパスで一般教養を中心に勉強する。二年目から支倉キャンパスに移るから、支倉でひとり暮らしをする予定」
 翠は少し沈黙してから口を開いたが、何を言うこともなく口を閉じた。
「翠の進路は?」
 何気なく訊いたことだったが、翠は少しの動揺を見せた。
「まだ決まってなくて、先週配られた進路調査票もまだ提出してないの……。そろそろ決めないとだめだよね。……ツカサ、本屋さんは別行動にしよう? 一時間したらここで待ち合わせ」
 そう言って、翠はほどよく混雑した店内に姿を消した。