デート当日、私はドキドキしながら家を出た。エントランスでの挨拶もギクシャクしてしまうほどの緊張度合い。
 時計を見てゲストルームを出てきたにも関わらず、バスの時間が気になって何度も懐中時計を確認する。
 逆算をして、待ち合わせ時間ちょうどに着くバスは十時四十分発。それだとツカサと一緒になってしまう可能性があるから、二十五分発のバスに乗った。
 日曜日だからか、バスの乗客は自分だけ。
 私は運転席の後ろ、数段のステップを踏む高い席に座り、右手に広がる住宅街を眺めていた。 
 遠くの雲間からは、幾筋もの光がキラキラと差し込んでいる。光はこの季節特有の柔らかなものだ。
 ツカサもバスに乗ったら同じ光景を見るだろうか。それとも、本を持参していてバスの中では本を読んでいるだろうか。
「……なんとなく後者が濃厚」
 そんなことを考えれば、バス停で待ち合わせして一緒にバスに乗れば良かったかな、などと少し残念に思う。