「司に距離置かれてるかもって、落ち込んでた」
 その言葉が解除キーになったらしく、桃華は閉じていた口を開いた。
「それ、属に言う避けてる、っていうのとはちょっと違うんです」
「どんな状態なのか知りたいんだけど」
 桃華は「了解」と言わんばかりに予定変更を持ちかけてきた。
「この二週間の出来事と映画、どっちを取ります?」
「桃華がいいなら前者で」
「もちろん、だめなんて言いません」
 そんなわけで、映画館が入っている駅ビルから出てきたのがついさっき。
 今は藤倉駅の東口から歩いて十分ほどのところにある公園に来ている。
 公園はさほど広くないものの、敷地内には池があり、ボートに乗ることもできるらしい。遊具がないからなのか、日曜日だというのに子供連れの家族は少なく、池のほとりや森林の中で絵を描く人の姿が目立つ。
 この時期、木陰を歩くのが気持ちいい季節だからか、中にはベンチで弁当を広げている男女もいた。
 俺と桃華は手をつなぎ、現在地を確認してから「桜ストリート」という名称がついた散策ルートを歩き始めた。