「……側にいたい。ずっと近くにいたい。もっと近くにいたい……」
 私の気持ちは伝わるだろうか。
 理性とか、自制とか、どうでもいい。ただ近くにいたい。もっと近くにいたい。それだけでいいから伝わってほしい。
「翠……もっと近くって?」
「……本当に逃げない?」
 勇気を出してツカサの顔を見る。ツカサは息を呑んでから、
「逃げないけど――」
 私は返事をすべて聞く前に、ツカサに抱きついた。
 ツカサの背に腕を回してぎゅっとしがみつく。
 逃げられる、もしくは反する力を加えられることを想像しながらの行動だった。行動を起こしたあとですら、いつ拒絶されるか、と怖くてたまらない。
 恐怖から、身体の震えが止まらなかった。歯の根が噛み合わなくなるのも時間の問題かもしれない。
 そう思ったとき、ツカサの腕が背に回された。
 これは受け入れられたことになるのだろうか……。
 気が少し緩み、新たに涙が流れる。心の底からほっとした。