「抱きしめてキスしたら――俺はその先を自制できるのかがわからない。正直に言うなら自信がない」
 ツカサはひどく切なげな表情をしていた。その表情を見て思い出す人がひとり――秋斗さんだ。
 私に触れたい、私に触れてほしいと言った秋斗さんを色濃く思い出す。
 もしかしたら、私はあのときと同じような場所に立っているのかもしれない。
 こういう話をツカサとするのは初めてだけれど、ツカサを見ればこの話をするのに勇気が要ったことくらいは想像ができる。
 求められていることに応じる覚悟はない。でも――。
「ツカサ……ツカサっ……」
「何」
 何か言わなくちゃ……。何か返さなくちゃ……。
 秋斗さんのときと同じにはなりたくない。
「ツカサ、ツカサ……ツカサ――」
 気持ちは急くのに、何も言葉が出てこない。
 秋斗さんのときは何もかもが怖くなってしまったけど、ツカサは違う。ツカサは違うのだ。
 違うことを伝えたいのに、どうやって説明したらいいのかがわからない。感情を言葉に変換することができない。