「手……貸して」
 ツカサの申し出にさらに息を呑む。
「本当に、どうしたの?」
「いいから手」
 気づけば右手を取られていた。
 あたたかい……。
 久しぶりに感じるぬくもりは、じわりじわり、と肌を侵食していく。
 この手はいつ解かれるのだろう……。
 そんなことを考えていると、
「悪い……」
「……ツカサ?」
 聞き間違いかと思って名前を呼んだ。でも、ツカサは次の言葉を発しない。
「……ツカサ、何に対して謝られたのかがわからないから、許そうにも許せないのだけど」
 明らかに、いつものツカサとは違った。
 どうしたら次の言葉を引き出せるかと考えていると、
「意図して避けてた……というか――」
 その言葉にツキン、と胸に痛みが走る。
 自分でも感じていたし、第三者に指摘もされていた。でも、本人に言われるのはまた違う痛みが生じる。
 やっぱり、「もう好きじゃない」と言われるのか。それとも、「別れよう」と言われるのか――。