違うのだ。見目を良くするためにラッピングをしたのではない。ただ、時間稼ぎをするためだけに施したもの。
 ……こんな説明、口が裂けても言えない。
 私が落ち込んだと思ったのか、ツカサは「悪い」と一言謝った。
「上がって」
「お邪魔します」
「何か飲む?」
「ハーブティーある? あるなら自分で淹れるよ?」
「ハーブティーなら棚にある」
「棚ってどれかな……?」
 会話をしているのに顔を合わせていない。最近は、私が話しかけても素っ気無く顔を逸らされることが多かった。だから、また顔を逸らされたら、視線を逸らされたらどうしよう、と思うと顔を見て話すことができなかったのだ。

 キッチンへ行くと、ツカサは吊り戸棚へ手を伸ばした。棚にハーブティーの缶を見つけたけれど、私が背伸びをしても手が届く位置ではない。
 テスト勉強のときは、いつもツカサが飲み物を用意してくれるので、私や海斗くんが何かを作ることはなかった。そのため、このキッチンに立ち入ることはなかったのだ。