時間的にはお昼どきということもあり、「お昼ご飯を食べてから行く」――そんなメールを送りたくなる。携帯を手にメール画面を起動してみるものの、床にしゃがみこむ勢いで断念した。
「無理……だって、今何かを食べられる気なんてしないもの」
 ……仕方ない、覚悟を決めて行こう。
 十階へ上がる前に唯兄のところへ寄ると、唯兄でも蒼兄でもなく秋斗さんに出迎えられた。
「いらっしゃい。翠葉ちゃんはお昼食べた?」
「いえ、まだ……」
「だったら一緒に食べない? これからコンシェルジュにオーダーするところなんだ」
 うわぁ……全力で便乗したい。でも、ツカサとの電話を切ってすでに三十分近くが経過している。いくらなんでも、これ以上ツカサを待たせるのは申し訳ない……。
「すみません……このあと、ツカサのところへ行く予定で」
「なーんだ、残念……。でも、なんか浮かない顔だね?」
「そ、そうですか……?」
「行きたくないならすっぽかしちゃえば? 責任なら俺が取ってあげるよ?」
 にこりと笑われ、その言葉に甘えてしまいたくなる。