『部活は午前で終わった。今、帰り。マンションへ向かってる』
 案の定、会話は終わってしま――あ、れ……? 終わってない?
 しかし、どうしてマンションなのか。
 中間考査が終わった今、ツカサがマンションへ帰ってくる理由はないはずだ。
「誰かに用事? ……確か、湊先生なら今日は栞さんと出かけるって言っていたけど。あ、楓先生?」
 それとも秋斗さんに用事があるのだろうか。
『翠に用事……っていうか、翠に会おうと思って向かっているし、電話してるんだけど』
 私に用……? 
 あまりにも信じられなくて、思わず本当かどうかを尋ねてしまう。すると、
『本当』
 そうは言われても、ここ最近は会話という会話をしていない。唯一会話になり得たものといえば、生徒会の仕事に関することくらい。そんな中、急に「用事がある」などと言われたら、変に勘ぐってしまうというもの。
 昨日、図書室で話そうとしたこと……?
 それはなんなのか――。
 考えても答えは出ない。なのに、恐怖感ばかりが募る。
「私に用事って、何? 電話じゃだめなの?」
『できれば会って話したい。だから、予定がないなら髪の毛乾かしたら十階に来て』
「……うん。でも、十五分くらいはかかるかも……」
『わかってる。急がなくていいから』
「わかった。……あ、今日ね、フロランタンを焼いたの。切り分けて持っていくね」
『待ってる』