「ツカサは……?」
「……わからないんだ。キスをすればその先を望む。箍が外れたように翠を求める。この二週間、ずっとそう思ってた。でも今は――」
 ただ、腕の中に翠がいて、キスを受け入れてくれる。それだけで満たされている。
 その先を確かに望んでいたのに。
 行為自体は拒まれたけど、どうしてか、それが自分を拒まれたことにはならない気がした。
「……ツカサ、お願いがあるの」
「何?」
「……これからは、避ける前に話して……?」
「何を?」
「……だから、その……ツカサの気持ちを」
「……気持ちって、欲求のこと?」
 翠はコクリ、と頷いた。
「急に避けられるのは理由がわからなくて怖い……。だから、話してほしい」
「話したところで翠は困るだけじゃないの?」
「……かもしれない。でも、話してほしい」
「……わかった」
 腕を解くと、
「ツカサ、もう一度だけ……」
 何、とは言われない。でも、キスを乞われているとわかる。
 唇を重ねると、翠は嬉しそうに微笑んだ。そして、
「……ツカサ、デート、したいな……」
「デート……?」
「うん。いいお天気だから……お散歩に、行かない?」
 翠の突飛な提案に、俺は表情を緩めて賛成した。