「キスはしていいの?」
「して……?」
 言ったあとに気づいたのか、翠は急に顔を背ける。そして、居心地悪そうに体勢を立て直そうとするから、そんな翠の動作を止めるべく、再度唇を重ねた。
 さっきまで冷たかった手が心なしあたたかくなっていて、そんなことに少しほっとする。
 唇を離すと、
「ツ、ツカサ……身体、起こしたい」
 真っ赤な顔で抗議してくる翠を見て思う。
 こっち方面はまるきり疎いくせに、自分からキスを懇願してきたり――本当に困る。
 嬉しくて、嬉しすぎて……。
 翠は体勢を直すと、俺が引いた手をぎゅっと握り返してきた。
「ツカサ……好き。大好き」
 俯いたまま言われても嬉しいって、何。
 俺は口元が緩みそうなのを必死で堪えていた。
「好き……」
 何度言われても嬉しい。でも、若干言われすぎてもったいなくも思え、翠の唇の前に人差し指を近づける。