「あんた、ここにいる意味あるの?」
「……え?」
 翠が顔を上げたときには、テーブルに着く人間すべての視線が翠に集まっていた。慌てふためいた翠は、咄嗟に謝罪の言葉を口にする。
「自己紹介、翠葉の番よ」
 簾条のフォローに立ち上がると、翠はいつもより小さな声で自己紹介を始めた。

 ミーティングが終わると、翠は自らその場の片付けと戸締りを買って出た。きっと、上の空だったことへの罪滅ぼしだろう。
 メンバーは各々フォローの言葉を口にして、その申し出を受けると共に図書室をあとにした。
 俺は翠が気になり図書室に留まったものの、なかなか声をかけられずにいた。すると、俺の視線に気づいた翠から話しかけてくる。
「さっきは話を聞いてなくてごめんなさい。次からは気をつけます」
 言葉は区切られたものの、翠はすぐに口を開く。
「ツカサはこのあと部活でしょう? 先に行って?」
 笑みを添えて言われたが、その笑みは間違いなく作られたもの。
 こんなふうに笑わせて、俺はいったい何をしているのか……。