蒼兄は何を言われたのかわからないような顔をしていた。
「ごめん、もう一度――何?」
「だからね、ツカサに距離を置かれている気がするの」
「またなんで……」
 なんで――それがわかったらいいのに……。
「理由は? 心当たりないの?」
 私はコクリと頷き、桃華さんとした話を蒼兄にも話した。
「いつだって普通に手をつないでくれていたの。でも今は、応じてはくれるけど、すぐに離されちゃう。手をつなぐのがだめなら、せめて近くにいたくて、でも、隣に座ると席を立たれちゃう。今までなら目を見て話してくれていたのに、最近は目も合わせてくれない」
 冷静に話そうと思っていても、事実を認める言葉を口にするたびに悲しくなって、最後は泣いてしまった。
 私がこんな状態では、蒼兄は話を切り上げることができない。わかっているのに、涙が止まらない。
 だめだ……こんなの、甘え以外の何ものでもない。
「蒼に、ごめん――大丈夫だから、仕事、始めて」
「翠葉、時間は大丈夫。まだ話し始めて十分も経ってないよ」
 蒼兄は優しく背中をさすってくれた。