「ねぇ、翠葉。藤宮司と何かあったの?」
「え……?」
「近頃よそよそしくない?」
「……やっぱり、そう見える?」
 翠葉は困った顔に薄く笑みを浮かべた。
「桃華さんもそう思っているのなら、気のせいじゃないよね……」
 心当たりがあるのか、翠葉は視線を落として何か考えているようだ。
「あのね、一緒にいることは一緒にいるのだけど、距離を置かれているのかなって……。でも、認めるのはちょっと嫌で、ずっと気づかないふりをしていたの」
 区切って話す翠葉を見て思う。これは指摘しないほうが良かったことなのだろうか、と。
 しかし、口にしてしまったものは引っ込めようがない。話すなら話すでとことん話してしまおう。それで何か解決策が見えるのなら、そのほうがいいに決まっている。
「……なんていうか、今までならもっと翠葉のことをかまっていたと思うのだけど、最近は遠ざけているように見えるのよね……。原因はわかっているの?」
「それが、何もないの。藤の会で会ったときは普通だったし……。週が明けて学校へ来たらこんな感じ」
「全く意味がわからないわね。迷惑甚だしい……」
 本音を吐くと、翠葉はまた力なく笑った。