「職場をマンションに引き上げはしましたけれど、秋斗さんがマンションから離れることはないでしょう? ですが、司さんは? 医学部へ進めば一年目は藤倉キャンパスですが、二年目からは支倉キャンパスへ移ります。湊さんや楓さん、ほかの方々を見ていても、支倉にあるウィステリアヴィレッジでひとり暮らしになるのではありませんか?」
「……そしたら、俺のほうが翠葉ちゃんに会う頻度が上がる……?」
「それは秋斗さんしだいですけど」

 ザイオンス効果を知ってから、俺はゲストルームへちょこちょこと顔を出すようにしていた。平日の夕飯はほぼ毎日、御園生家に混ざって食べている。
「今じゃ平日の夕飯はゲストルームで一緒に夕飯を食べてるよ。一緒に食べられなかった翌日には、『昨日はどうしたんですか?』って訊かれる程度にはなったかな」
「なら、あとは継続するのみですね」
「んー……全然俺に靡きそうな気配はないけどね」
 そんな話をしているところに静さんが彼女を連れてきた。
「雅、どうする? ふたりで話したいのなら俺は席を外すけど」
「秋斗さん、来てくれてありがとう。彼女とふたりで話すことが許されるのなら、ふたりで話します」
 雅に迷いはなかった。