「会長に秋斗さん、静様だなんて……」
「かわいそう?」
「えぇ、お気の毒に思います」
「……そうだね。普段、これだけ大勢の大人に注視されることはないだろうから、緊張の連続だろうな」
 俺が苦笑を漏らすと、
「そのあたり、留意して差し上げなくて良かったのですか? ……それとも、翠葉さんの気持ちをより牽制効果を優先した……?」
 雅の言葉にひとつ頷く。
「翠葉ちゃんは俺たちに関わっていくことを選んでくれたからね。それなら、使えるものは何を使ってでも護るよ」
 雅はクスリ、と笑みを漏らした。
「秋斗さんに護られたいと思っている女性は少なくありませんのに、翠葉さんには通用しないのですね」
 雅と笑って話をする日がくるなんて、去年の俺には全く予想ができなかった。こうして話せるようになったのは、彼女のおかげと言えるだろう。
「そういえば……あれ、試してみましたか?」
 雅が言う「あれ」とは、「ザイオンス効果」のこと。
 先日、まだ翠葉ちゃんのことを諦めていない旨を話すと、こんなことを教えてくれたのだ。