会長職になど興味はない。候補に挙がろうとなるつもりもない。それでも、その立場が翠を護る力を持つというだけで迷いが生じる。
 翠に左右されすぎだ――。
 そんな自分を悟られたくはなくて、
「そのくらい利用しなくちゃ割に合わないだろ」
 そんな言葉を返してソファから立ち上がる。
 翠より先に立ち上がっても、いつものように手を差し伸べることができなかった。
 人目のない場所で翠に触れたら歯止めが利かなくなる。そう思えば、外に出るまで翠には触れることはできなかった――。