涼先生は気を遣ってツカサとふたりにしてくれたのかもしれない。でも、できればもう少しいてほしかった。唯兄にからかわれようと何を言われようと、何か喋っていてくれる人がいたほうが良かった気がするのだ。
 ふたりにされた途端、この場はしんとしてしまった。今となっては風が吹くたびに、藤の房がさわわ、と音を立てるのみ。
 視線を芝生に落としていたものの、もう一度藤をバックにしたツカサが見たい。
 勇気を出してツカサを見ようとしたら、そのタイミングでツカサが私の隣に腰を下したため、タイミングを逃がしてしまった。
 どうしたらツカサを見ることができるだろう……。
 考えに考えて、ツカサが自分を見ていなければ見られるかも、という答えにたどり着く。
「ツカサ、お願いがあるの」
「……何?」
「目、瞑って?」
「は……?」
「目、瞑ってほしい」
 理由を訊かれるかと構えていたけれど、隣から声は返ってこない。