けれども、秋斗さんが話す内容を聞いてしまうと、もっとひどい境遇にいた印象を受ける。第三者である秋斗さんが話すからこそ「擁護」の面が浮かび上がるのかとも思ったけれど、それにしても散々な扱いだと思えた。雅さんが話してくれたそれよりも、もっと過酷な環境下にいたように思えた。
「翠葉ちゃんと雅が接触したあと、じーさんから静さんのもとに連絡があったらしい。雅に関する一切を任せる、ってね。……俺には見えなかったものがじーさんには見えてたんだろうな」
 朗元さんの命を受けた静さんは、すぐに雅さんの身辺調査を始め、雅さんを自宅での軟禁状態にしたあと、可能な限り時間を作っては雅さんのもとへ出向き話し合いを続けてきたという。そうして時間をかけて雅さんの凝り固まった心をほぐしていったらしい。
「雅が唯一心を開いた相手は初等部、中等部でお世話になった養護教諭。その人を探しだして、しばらく雅を預かってくれるように話をつけてきたのも静さん。……じーさんも静さんも、すごいよね。俺も、人を見る目をもっと磨かないと……」
 秋斗さんは誇らしげに微笑んだあと、自嘲気味に唇を引き結んだ。