「雅の話を聞いてくれてありがとう」
「いえ、お礼を言われるようなことは何も……」
「そんなことないよ。雅は翠葉ちゃんと話すことで心置きなく日本を発てる。それはとても大きなことだと思う。だから、ありがとう」
「……秋斗さん、以前とは違う対応でしたね?」
「雅に対して、かな?」
「はい」
「……そうだね、和解したってところかな。人に歩み寄る努力なんて今までほとんどしてこなかったけど、一歩踏み出したら違う関係が築けるんだ、ってこの年になって知った」
 今度は秋斗さんの口から、雅さんが一族の中でどんな存在だったのか、どんな扱いを受けてきたのかを聞かされた。
 雅さんは自分のことを第三者の視点から話していたと思う。なぜなら、話される内容に主観がほとんど含まれていなかったから。