それは、私の記憶にも新しいネックレス。金色のチェーンに通されているのは藤の花びらを模したトップ。去年、プラネットパレスで朗元さんに紫紺の品としていただいたものと同じ。
「このお気持ちだけで十分」
 雅さんは大切そうにそのネックレスを胸元にしまった。
「そんなわけだから、当分の間は藤の精はあなたひとりでしょうね。そういう意味では、あなたこれから大変よ? 一族内外、強欲な人間なら飽きるほどいるわ」
 私は苦笑を貼り付け、
「……つまり、そういうことを教えていただきたくて」
 雅さんはきょとんとした顔をした。
「……そういうこと。わかったわ。なんでも訊いてちょうだい? ご所望とあらば、処世術だって教えちゃうわ」
 そこへスーツを着た人がやってきた。
「雅様、そろそろお時間です」
「今行きます。……翠葉さん、今まで本当にごめんなさい。それから、話をすべて聞いてくれてありがとう。お手紙、楽しみに待っています」
 私たちは握手をして別れた。