秋斗さんと湊先生の会話にわたわたしていると、静さんに手を差し出された。
「姫君、お散歩をご一緒しても?」
「……はい」
 今度は静さんに連れられ、私は庭園を回ることになった。

「少し座ろうか?」
「はい」
 赤い布がかけられた椅子に浅く腰掛けると、すぐにお茶が運ばれてきた。静さんに差し出されたものの、先ほど真白さんが点てたお茶をいただいてしまったため、どうあってもこれ以上飲むことはできない。控え目に笑みを添え口を付けずにいると、
「あぁ、そうか。翠葉ちゃんはカフェインがだめなんだったね」
「……すみません」
 突如、あたりがザワリとした。
「静様に勧められたお茶に手をつけないだなんて」
「まぁ、なんて礼儀を知らないお嬢さんだこと」
 刺すような視線が向けられ、小さな囁きすら漏れずに聞こえてくる。