秋斗さんと藤を見ながら庭園を歩き、人が集まる場所へと連れていかれた。
 人垣の中にいたのは静さんと湊先生。周囲にいる人が秋斗さんに気づくと、自然と垣根が割れる。
 静さんが私に気づき、
「湊、少し席を外す」
「どうぞ。翠葉、いらっしゃい。その振袖、とてもよく似合っているわ」
「ありがとうございます」
「司には会ったの?」
「いえ、実はまだ見かけてもいなくて……」
「意外ね? 司のことだから、秋斗にエスコートなんてさせないようにガッチリガードしてると思ったのに」
「それなんだけどさ、最初のエスコートはじーさんに奪われたんだ」
 秋斗さんがおかしそうに話す。
「あらやだ、おじい様ったらさすがだわ」
「じーさんがさ、翠葉ちゃんと面識がある人間を代わる代わるエスコート役につくよう指示を出してるんだよね」
「じゃ、下っ端の司は一番最後ね」
「そういうこと」