セットが終わると、四畳半のフィッティングルームへ移動して振袖に着替える。
 すべての準備が整うと、写真スタジオへ連れていかれ、綾女さんに家族写真を撮っていただいてから、藤山にある朗元さんのお屋敷へと向かった。

 藤山の一角に立派な門構えが見えてきた。そこが朗元さんの邸宅なのだろう。
 私たちのほかにも車が乗りつけてはいるものの、ハイヤーということはなく、黒塗りの外車がほとんど。
 車が停車すると、外からドアが開けられた。
 最初に唯兄と蒼兄が降り、次がお父さんとお母さん。私が車を降りようとしたとき、目の前に差し出された手があった。けれども、その手は家族のものではない。家族よりもお年を召した人のもの。
「よく来てくれたの」
「ろうげ――」
 言葉半ばで朗元さんが私の口元に人差し指を立てる。
「今日は元おじいさんが良いかの」
 それが意味することは何か――。